こんにちは!
滋賀県近江八幡市で、
創業天保元年から6代続く石屋、
兼子石材店の店主・兼子裕司です。
自己満足かも分かりませんが、
ものづくりが大好きで、42年間石屋をやってきたワシの経験と思いを書いているブログです。
皆さんは石の彫刻を作る時、
石を寝かせて作ると思いますか?
それとも立てて作ると思いますか?
あまり考えたこともないと思いますが(笑)
ワシは高校を卒業してから岡崎へ石彫刻の修業に行きました。
その時に習ったのは、
基本的に石を寝かせて作る方法でした。
今でも基本はそのやり方です。
でも最近は、
石を立てて彫ることもあります。
今日は、
「石彫刻は寝かせて作る?立てて作る?」
について書いていきたいと思います。
岡崎で習った石彫刻の作り方

粗取りなどは、この方が作業しやすいんです。
ワシが岡崎で修業していた時は、
基本的に石を寝かせて彫刻を作っていました。
今でも粗取りは寝かせて作っています。
粗取りとは、
大きな石から余分な部分を取って、
大体の形を作っていく作業です。
石を寝かせている方が、
ノミを使って石をはつる作業がやりやすいんです。
それに、寝かせたままで作れるところは、
今でも寝かせて作っています。
岡崎で習った基本は、
今でも変わっていません。
イタリアで見た石彫刻の職人
岡崎での修業を終えて家に帰って間もない頃、
イタリアへ行く機会がありました。
岡崎の彫刻石屋さんの集まりに、
知り合いの番頭さんから誘ってもらったんです。
その時、現地で石彫刻を作っている職人を見ることができました。
ワシが岡崎で習った作り方とは違い、
石を立てて彫刻を作っていました。
「外国の職人は、こんなふうに作るんやなぁ。」
と思ったのを覚えています。
ただ、その時に見たからといって、
すぐにワシも立てて作るようになったわけではありません。
昔のようにはいかなくなってきた
岡崎から帰って10年ぐらいは、
彫刻の仕事も結構ありました。
まだ修業していた頃の感覚も残っていたので、
その頃は岡崎で習った方法で作っていました。
ところが、その後は彫刻の仕事がだんだん少なくなり、
作る機会も減っていきました。
そして10年ぐらい前から、
少しずつですが、また彫刻の仕事が出てくるようになりました。
久しぶりに作ってみると、
岡崎で修業していた頃のようには、
なかなかいかなくなっていました。
もちろん、
一般の方が見ても分からないぐらいの違いです(笑)
でも、作っているワシには気になるんです。
そんなこともあって、
昔イタリアで見た、石を立てて彫る方法を取り入れてみようと思いました。
もっと良いものが作れるんじゃないか。
そんな思いもありました。
寝かせて見る時と立てて見る時は違う

実際に石を立てて見てみると、
寝かせて見ていた時とは、
なんか感じが違うんです。
特に顔を作っている時です。
寝かせている時には、
これで良いかなと思っていても、
立てて見ると、
「なんか違うなぁ。」
と思うことがあります。
どこがどう違うのかと聞かれても、
細かいことはうまく説明できません(笑)
全体のバランスと言うんでしょうか。
もしかしたらワシだけかも分かりませんが、
寝かせて見る時と立てて見る時では、
見え方が違うように思うんです。
それからは、
顔を作る時には寝かせたり立てたりしながら作るようになりました。
寝かせている時に完璧に作らない
今のワシの作り方は、
まず寝かせて大体の形を作ります。
この時に大事なのは、
完璧に作ってしまわないことです。
石は一度取ってしまうと、
元には戻せません。
寝かせている時に完璧に作ってしまうと、
立てた時に気になるところがあっても、
直しようがなくなることがあります。
だから寝かせている時は、
大体の形まで作っておきます。
そして立ててから、
きちんと形を整えていくようにしています。
もちろん正面からだけではありません。
横から見たり、斜めから見たり、
少し離れて全体を見たりします。
近くで見ている時と、
離れて全体を見る時でも、
感じ方が違うことがあります。
立てて作るのも簡単ではありません
それなら最初から全部立てて作れば良いのでは?
と思われるかもしれません。
でも、そう簡単な話でもありません。
立てて作ると、
今までとは違う角度で道具を使わなければならないところもあります。
作業する高さも調整しなければなりません。
寝かせている方がやりやすい作業もたくさんあります。
ただ、立てて見ることで、
「ここはもう少し石を取ってもええな。」
とか、
道具を当てる角度が分かることもあります。
それが、また寝かせて彫る時の参考にもなるんです。
だからワシは、
寝かせたり立てたりしながら作っています。
42年やっていても、まだまだです
立てて作る方法を取り入れてから、
以前よりはだいぶ良くなったと思っています。
でも、いつも思い通りにいくわけではありません。
いまいちやなぁと思う時も、もちろんあります(笑)
42年間石屋をやってきましたが、
まだまだ思うようにいかないこともあります。
岡崎で習った基本は、
今でもワシの石彫刻の基本です。
そこに、イタリアで見た職人の作り方を、
自分なりに取り入れてみました。
これからも、少しでも自分が納得できるものを作っていきたいと思っています。
一般の方が見ても分からないような、
ほんの少しの違いかもしれません。
でも、作っている本人には気になるんですよね(笑)
これも自己満足かも分かりませんが、
少しでも良いものを作りたい。
そんな思いで、
今でも石を彫っています。